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デポ剤(持効性注射剤)

デポ剤(持効性注射剤)


・当院ではデポ剤の注射を取り扱っております(保険適応内)。通常、肩かお尻に筋肉注射をします。デポ剤(「持効性注射剤」「LAI」とも言います)とは、「統合失調症」と診断されている方向けに作られた薬剤(注射)の一種です。「デポ」とは英語で「貯蔵庫・倉庫」の意味で、1ヶ月分(または2週間分)のお薬が1回の注射の中に蓄えられている事が由来となっています。

・日本精神神経学会のホームページによれば、「統合失調症とは、思考・感情・行動の統合が失われる病気」とあります。確かに空笑(くうしょう)と言う、場にそぐわない笑いを見せる場合もありますが、一方で臨床の現場では、統合失調症の悪化時には、感情の暴走(興奮している状態)と衝動的な行動と滅裂な思考が、むしろ足並みをそろえて一体となり現れる事もしばしばあります。また幻聴や妄想などの陽性症状や、自閉や感情鈍麻(全体的に感情表現が鈍る事)などの陰性症状は一般的に見られる症状です。「自我障害」(自己と他者・世界の境界線が曖昧になる感覚障害の一種)が疾患の根底・中核にあるとする意見も、学者の間で根強くあります。

・統合失調症は最近の研究では遺伝要因が8割弱(R.Hilkerら, 2018)と影響が大きくかつ慢性に増悪していく深刻な疾患の一つですが、病識(つまり自分が病気であると自覚する事)が薄い傾向があり、再燃を繰り返す事がしばしば問題となります。1年間のうち、服薬を1〜10日間中断するだけで、入院するリスクが約2倍になるという研究もあります(Weidenら, 2004)。

・デポ剤の最大の特徴は、薬剤の血中濃度が安定する事です(イラスト図を参照)。
ある研究結果によれば、経口剤からデポ剤へ変更しただけで、6ヶ月以内の再発率が約4分の1となります(Kaneら, 2015)。