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うつ病の炎症モデルと社会的脅威仮説

うつ病の炎症モデルと社会的脅威仮説

(Slavichら, 2014年論文より抜粋)

院長挨拶でも述べたとおり、私どもは「精神疾患は炎症により悪化をする」という考え方に対し注目・重視しながら治療に生かしています。
うつ病の発症モデルとして1965年に「セロトニン仮説」がハーバード大学のShildcraut氏により提唱され現在まで主流の考え方となっています。これは「うつ病は脳内のセロトニンの減少により引き起こされる」という仮説です。しかし近年になり、「セロトニンが低下していた(実際は脳脊髄液中の5H1AAというセロトニンの最終代謝物質の量を測定)人の割合はわずか28%だった。」という研究結果(Asbergら, 1976年)が示されました。つまりセロトニンが低下する人々だけでなく、増加あるいは不変であるタイプのうつ病も存在するのです。またうつ病はセロトニンだけでなくあらゆる神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、グルタミン酸、ギャバ)の神経系統の障害が関わる事、その背景として炎症があるという研究結果が世界各地で徐々に発表される様になってきました。

(Slavichら, 2014年論文より抜粋)

炎症を発生させる要因としては、ストレスの他、過剰な糖質や動物性脂肪の摂取、過剰な毒素、腸内環境の悪化、などが挙げられます。2014年Slavichらは、論文中で炎症が脳に与える影響やメカニズムを詳細に述べていますが、遺伝や性格、幼少期の環境、社会的脅威(対人ストレス)といったリスク要因があった上で、慢性の進行性の炎症がいかにうつ病を発症させるかといった観点から「うつ病の社会的脅威仮説」(Social Threat Hypothesis)を提唱しています。

日本からも愛知医科大学の松永らの研究(2013年)や、神戸大学の古屋敷らの研究(2018年)により以上の仮説を裏付ける様な結果が示されており、特にストレスとの関連において内側前頭前野(mPFC)に直接炎症が起こり、逆に幸福感によりその傾向が緩和されるメカニズムが注目されています。

(古屋敷ら,2018年論文より抜粋)