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脳のネットワークについて

脳のネットワークについて

脳は複雑ネットワーク(ニューラルネットワーク)として働いています。つまり、脳の中の膨大な数のエリアどおしがつながって、情報をお互いに共有しあっている状態です。エリアの集まりで一定の規模に達した集団を「クラスター」と呼び、その中で中心的存在(「ハブ」と言います)になるエリアに特に集中して情報が集まります。ハブとハブどおしは太いパイプでつながっています。最もシンプルなモデルは、情報が入力される神経細胞群(入力層)と、数個から数十個程度の途中で情報をバトンタッチする幾層もの神経細胞群(隠れ層)、そして最後に出力される神経細胞群(出力層)に別れます。この流れや図は、あたかも「マインドマップ」(イギリスの著述家トニーブザンが開発した情報やアイデア整理や記憶法の革新的ツール)に類似しています。

脳の複雑ネットワークをに似せて作られた人工コンピュータプログラムの事を「AI(人工知能)」と言います。AIの昨今の進化は凄まじく、世界一複雑なゲームと言われる囲碁の世界チャンピオンと対戦しアルファ碁というAIが勝った事は記憶に新しいと思います。将来人間の仕事がAIに置き換えられるという側面もありますが、逆に言いますと、AIや最新技術を通じて脳の持っている潜在能力が開かれていく時代の入り口に立っているとも言えます。

精神医学的には、診断と治療の双方に上記の技術が役に立つと予測されます。例えば診断に関して言いますと、統合失調症(幻覚や妄想、自閉、時に興奮などを認める難治性の精神疾患)と広汎性発達障害(コミュニケーション障害や強いこだわりや繰り返し行動などを認める慢性進行性の精神疾患)は、別々の疾患とされてきましたが、最近の脳科学、特にネットワーク研究においては、約80%の脳エリアで共通の遺伝子基盤がある事が名古屋大学によるAIを使った研究で判明しています。(川久保ら,2018)

脳ネットワークの観点に照らし合わせた治療に関しては、ニューロフィードバック(脳波バイオフィードバック)が期待されています(他ページ参照)。つい最近までは、脳の1、2点のエリアのみを対象に、しかも脳の表面に限られた脳活動の脳波トレーニングしか出来ませんでした。技術の進歩とともに、最近は多数の脳エリア(最大19箇所)を対象に、かつ脳の深部(表面から距離がある深い部分)を含めた同時トレーニングが可能な時代になってきたため、障害されている脳のネットワーク全体を丸ごとトレーニング可能となり、様々な精神疾患(例えばうつ病やADHDなど)に対する効果のエビデンス(科学的根拠)が出始めています。こうした日々進歩する脳科学の最新情報をいち早くキャッチし、患者様に還元できればと考えております。

(Neural Network Wikipediaより抜粋)

(マインドマップの一例/medium.comイラスト図より抜粋)


(川久保ら, 2018年論文より抜粋)